注文住宅にも建売戸建てにも、リフォームでも太陽光パネルを搭載することが一般的となってきました。省エネ性能・断熱性能に優れ太陽光発電を備えた住宅はZEH住宅として様々な補助金や税制優遇の対象となり、今後の住宅の標準になっていくともいわれています。
そんな中、「屋根にはほとんど太陽光が載せられない家の形状だ」「屋根の向きが悪く効率が悪い」という方も少なくないでしょう。そのような方にお勧めしたいのが、「太陽光カーポート」です。
太陽光カーポートとは?
太陽光カーポート(ソーラーカーポート)は、その名の通りカーポートの屋根に太陽光パネルを搭載したものです。太陽光カーポートには、大きく分けて一体型と分離型があります。
一体型は、太陽光パネルが屋根になっているものや、一つの商品として販売されているもののことを指します。一体型の場合はサイズ展開に限りがあるものの、太陽光パネルが効率よく配置できるサイズになっているため、1台用で3~4kW分が搭載できます。
分離型は、ガルバリウム鋼板やスチール折板の屋根を載せた耐久力に優れたカーポートに別売りの太陽光パネルを搭載する商品です。YKKAPのジーポートPRO PVなどが代表的です。分離型の場合はカーポートのサイズ展開から自家用車のサイズに合わせて選ぶことができます。大きめの普通車2台を所有している方には、一体型の2台サイズでは柱と柱の間が狭く感じるかもしれません。そのような心配がある場合は、分離型で大きめのカーポートを選び、パネルを載せてもらうとよいでしょう。
また、オーダーメイド型として金属や木材などで十分な強度のカーポートを建築し、そこに太陽光を設置するというケースもあります。
太陽光カーポートを設置するメリット
屋根ではなくカーポートに太陽光発電を設置するメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。大きく3つご紹介します。
駐車スペースの有効利用
太陽光カーポートは、駐車スペースの有効活用の一つです。駐車場を単なる車の置き場所として終わらせるのではなく、太陽光発電システムを併設することで、駐車スペースを利用してエネルギーを生産できます。サイズは1台用~3台用のもが多く、発電量も3~10kWほど見込めます。
カーポートが設置されることで、車の汚れや紫外線による劣化も抑えることができ、まさしく一石二鳥と言えるでしょう。
屋根だけでは不足する発電量を補える
屋根の形や大きさ、向きによっては、太陽光パネルをほとんど載せられません。すでに住んでいる家の場合は現状に合わせなければならないですし、新築の場合でも太陽光パネルを効率よく載せられる形にすると家の外観が限られてしまいます。
そこで、屋根に少しだけ乗せ、不足する分はカーポートで補うという方法があります。屋根には全く乗せずにカーポートのみに設置することももちろん可能です。
カーポート1台分でもおおよそ3kW前後の追加が見込めます。家の発電とカーポートの発電を紐づけることもできますので、屋根に少ししか載せられない方はぜひ検討してみてください。
メンテナンスがしやすい
2階建ての屋根に太陽光パネルを載せると、メンテナンスや入れ替え・修理が発生する際には毎回足場を設置しなければなりません。カーポートの場合は高さ2.3m~3mほどなので、足場が必要になることもありますが、家を囲うより、高さもサイズも抑えられます。脚立をかけての作業が可能な場合もあるため、点検や交換などのコストも抑えることができるでしょう。
太陽光カーポートでZEH水準をクリアできる?
太陽光カーポートを設置する場合に気になるのが、「ZEH水準の認定をもらえるか」です。特に新築で家を建てて外構で太陽光カーポートを考えている方にとっては補助金や住宅ローンの金利にも影響しかねない重要なポイントとなります。
太陽光カーポートでZEH水準を証明したい場合はBELS評価書を申請しよう
太陽光カーポートを自宅敷地内に設置し、カーポートに搭載した太陽光パネルで発電する場合は、その状態でBELS評価を受ける必要があります。
ZEH住宅は屋根に太陽光パネルが搭載されていることが一般的ではありますが、定義されているわけではありません。BELS評価は任意のタイミングで受けることができます。新築で家を建てて、カーポートを設置して太陽光発電システムを接続した状態でBELS評価を受けることで、創エネ設備がある旨が評価され、住宅の性能もZEH水準をクリアしていればZEHの認定がもらえます。
新築時に設置してZEHの補助金や住宅ローンの金利優遇を受けたい場合
ZEH住宅は、新築時の補助金やフラット35等の住宅ローンの金利優遇になります。前述のとおり、建物の新築時に太陽光カーポートを施工した状態でBELS評価を受けてから竣工検査やフラット35等の適合検査を受けるという順序で手続きをすることが大切です。
設計段階でハウスメーカーや工務店に「太陽光パネルはカーポートに設置したい」ということと、「太陽光カーポートでZEHを取ってほしい」ということを伝えておかなくてはなりません。
また、太陽光カーポートを得意とする提携業者がない、屋根に太陽光パネルを載せることがパッケージ化されているようなハウスメーカーでは対応してもらえないこともあります。太陽光カーポートでZEH住宅とするのはメジャーな方法ではないということは理解しておきましょう。
リフォームで補助金はもらえる?
太陽光カーポートを設置することに対する補助金は、あまり行われていないのが現状です。蓄電池の設置や電気自動車用の急速充電器の設置を同時に行う場合は、補助金を出している場合があるので事前によく確認しましょう。
太陽光カーポートの設置費用と工事
太陽光カーポートを設置するにはどれくらいの費用がかかり、どのような工事を行うのでしょうか。太陽光パネルの価格が下がってきたこともあり、メーカーによって価格差が開いてきていますので、性能や耐用年数などを考慮して商品選定を行いましょう。
太陽光カーポートの費用相場
太陽光カーポートの費用は、2台用で200万円前後、3台用で280万円前後、4台用で350万円前後が相場となっています。
上記は太陽光パネルとカーポートを合わせた費用の相場です。別途工事費としてカーポートを設置する工事の費用、カーポートに太陽光パネルを設置する工事費用、太陽光カーポートと自宅の電気系統を接続する工事費用などが発生します。各種工事費用相場は50~100万円ほどです。
太陽光カーポートを設置する際は、できる限り現地を見てもらったうえで複数社に見積もりを依頼しましょう。
太陽光カーポートはカーポート設置工事と電気工事が必要
太陽光カーポートを設置する際は、「カーポートの設置工事」と「太陽光発電と家を接続する工事」が発生します。
設置場所によっては駐車場の土間コンクリートにカーポート設置のための穴をあける加工費や、支柱を埋めるための穴を掘った後の残土処理などが生じることがあります。見積もりの前に現地の状況を施工業者に確認してもらうとよいでしょう。
電気工事では、太陽光カーポートで発電した電力を自宅に送り、余った分は売電できるように接続する工事が必要です。
太陽光カーポートの設置には建築確認が必要
太陽光カーポートは、太陽光パネルの下に駐車スペースを設ける「特殊建築物」に該当します。そのため、工事を行うには建築確認の申請を行い、許可を得てから着手する必要があります。
また、土地の面積に対して建築物を建てられる割合を示した「建蔽率」にも影響を与えます。一般的な土地では60%ほどになっていることが多く、土地や家を真上から見た状態の面積で算出します。建物ですでに60%ギリギリになっている場合、太陽光カーポートの設置は難しくなりますので事前によく確認しておきましょう。
まとめ
太陽光カーポートは、屋根形状にかかわらず太陽光パネルを一定量設置できる画期的な設備です。ZEHとしてBELS承認を受けることもできるため、補助金や住宅ローンの金利優遇を得たい方にもおすすめできます。
設置には様々な注意事項があるため、設置を依頼する業者や住宅の建築会社とよく打ち合わせを行いましょう。