注文住宅を建てる際、資金計画や見積もり、ローン審査を経て契約に至りますが、その後の打ち合わせ等でどうしても生じてしまいがちなのが予算の調整です。住宅ローンで借りられる金額が決まっている以上、大幅に予算を超えることは難しいでしょう。そこで、予算オーバーにつながりやすい原因部分と、調整方法をご紹介します。

注文住宅の予算オーバーの原因

注文住宅を建てる際に予算オーバーとなる原因はいくつか考えられます。主に土地代・間取り（建物の大きさ）・設備面です。順にみていきましょう。

土地の選び方

まず、土地の選び方が予算配分に大きな影響を与えます。アクセスの良い場所や人気のエリアは当然ながら地価が高いため、その分予算を圧迫します。また、ライフラインの引き込み工事が必要な場合や、地盤改良が必要な土地は追加費用がかかりやすいです。

土地を決めた段階ではまだわからないものもありますし、お金がかかる部分が見つかってしまったからと言って一から探しなおすわけにもいかないのが難しいところです。契約前にできる限り多くの情報と見積もりを集められるよう、建築会社や不動産屋さんと協力しましょう。

建築材や設備の選択

建築材や設備の選択も予算オーバーの大きな原因です。高品質で高価な建材や設備を選ぶことで、家の価格は一気に上がります。キッチンやバスルームの設備を標準よりもグレードアップしたり、標準ではないメーカーの製品にしたり、床材を無垢床やタイル敷にこだわったりすると、費用が増大します。必要最低限の設備や標準的な建材を選ぶことで、コストを抑えることができます。

設計・間取りの変更

設計や間取りの変更も予算に影響します。家を建てていく途中で間取りを変更したり、追加工事を依頼したりすると、タイミングによっては追加料金が発生する場合があります。

また、そもそも家を大きくしすぎているケースもあります。流行の間取りを取り入れすぎて個室が増えた結果、坪数が増えて家全体の価格がつりあがっている可能性も考えられるでしょう。

脱衣室と洗面所を分ける間取りは昨今オーソドックスになってきています。その他にも採用されている人が多いランドリールームやファミリークローゼット、土間収納やシューズクロークが自分たちのライフスタイルに合うのか、ほかの部屋と合体させて済ませられないかなど、区切りすぎずに面積を抑えるように考えるとよいでしょう。

土地選びによって建物の自由度が変わる

予算配分を考えると、土地選びがとても重要になってきます。土地に合わせて建物を考えていく順序からも、土地の購入や整備に多額の資金が生じるからと言って「じゃあ土地を探しなおす！」とはなかなかいかないものです。契約前に調べられるものはなるべく調べ、土地にどの程度の資金が必要となるのか把握しておきましょう。

ライフラインの引き込み工事費用

新たに購入した土地に電気、ガス、水道などのライフラインを引き込む工事が必要な場合があります。分譲地では既にライフラインが整備されていることが多いですが、空き地や田畑として使われていた場合は水道等の引き込みの予算が必要です。前面道路まで来ているのが望ましいですが、中には数十メートル離れていることも少なくありません。土地選びの際には既にライフラインの整備がどの程度進んでいるかを確認することが重要です。

土地の形状や高低差

土地の形状や高低差も建物の設計に大きく影響します。不整形な土地や高低差のある土地では、基礎工事や設計に工夫が必要となり、結果的に工事費用が増加することがあります。特に、傾斜地や変形地に建物を建てる場合は、基礎の強化や特殊な構造が必要となる場合が多いです。家づくりを進める中で、工務店とよく相談し、土地の形状に適した設計をすることで無駄な費用を抑えることが可能です。

地盤改良の有無

地盤の状態もまた、建設費用に大きく影響します。弱い地盤の場合、地盤改良工事が必要となります。この工事は費用がかかるだけでなく、改良の程度によっては建設期間が延びることもあります。地盤調査をしっかり行い、どの程度の地盤改良が必要か予め把握しておくことで、予算オーバーを防ぐことができます。また、地盤がしっかりしている土地を選ぶことで、地盤改良費用を削減することが可能です。

注文住宅の減額調整方法

注文住宅の家づくりで予算オーバーになってしまった場合、どのように減額調整を行うかが課題となります。そこで、具体的な減額調整方法をご紹介します。

間取りの見直し

まずは間取りの見直しです。多くの部屋を作りすぎるとその分建築費用も上がります。必要最低限の広さや部屋数にすることで、施工費用を抑えることができるでしょう。各住宅会社では建物価格の目安となる「坪単価」を公表している場合がありますが、1坪（2帖）減らすごとに坪単価分が削減されるようなイメージです。減額に最も効果があるのは、床を減らすことだと覚えておきましょう。

設備のグレードダウン

設備のグレードを下げることも減額には有効です。水回りの設備のオプション追加を取りやめる、標準ではない設備の採用を取りやめる・数を減らすなどが考えられます。できるだけ標準仕様内に収めつつ、どうしてもこだわりたい部分だけに注力するようにしましょう。

外装・内装材の選定

外装や内装材を選定する際にもコスト削減が可能です。標準仕様がベーシックなフローリングとクッションフロアで構成されている場合、無垢床やタイル、コーティングが強い床材は追加差額が大きくなりがちです。差額の大きい床材を使用する面積をなるべく小さくするように調整してみましょう。

造作家具を減らす

造作家具を減らすことも減額調整に有効です。備え付けられているとわずかな隙間が生じず、家具を購入する必要がないというメリットがありますが、予算オーバーしてしまうのであれば既成品の家具に置き換えるとよいでしょう。隙間収納用の家具などもラインナップが増えており、ネット通販で手ごろな価格で購入できるものも多くあります。

多くの方が採用している可動棚ですが、いたるところに採用してしまうと、奥行きによっては余分なスペースができたり使いにくさが生じたりすることもあります。収納家具や棚は自分で手配するか、予算が許す範囲で後から追加することも検討しましょう。

外構工事を最低限にする

外構工事も費用がかさむポイントです。庭木や植栽は後から自分で植える、フェンスや塀のデザインをシンプルにするなどしてコストダウンを図りましょう。最低限必要な外構工事だけを先に行い、残りは予算に応じて手を加えていくのも一つの方法です。

絶対に削ってはいけない重要箇所

注文住宅の家づくりにおいて予算を抑えるための減額調整は非常に重要ですが、絶対に削ってはいけない重要な箇所もあります。あまりそこを犠牲にする業者はありませんが、「構造部分」と「断熱性能・気密性能」にかかわる部分は削らないようにするべきです。

建物の構造部分は、家の安全性や耐久性に直結します。地震や台風などの自然災害に対しても強くなければなりません。特に柱や梁、基礎部分は絶対に削減してはいけません。

断熱・気密性能も重要です。断熱材を削減したり、気密施工をおろそかにしたりすると、室内の温度が外気温の影響を受けやすくなり、冷暖房効果が低くなります。結果的に、電気代がかさみ、長い目で見れば非常に費用がかかることになります。住み心地にも大きな影響を与えるため、この部分を抑えることは避けるべきです。

注文住宅で予算を抑えるための減額調整は必要ですが、安全性や快適性、長寿命につながる重要な箇所を削らないようにしましょう。適切なバランスで予算内に収めることが、満足のいく家づくりの鍵です。

まとめ

注文住宅で予算オーバーを避けるためには、予算計画をしっかりと立て、減額調整の工夫をすることが大切です。この記事で紹介したように、土地の選び方や建築材、設備、間取りに関する選択次第で費用が大きく変わります。
また、施主支給やDIYを活用すれば、工務店への依頼コストを減らせます。自分でできる範囲で手を加えることで、自分好みの家づくりをしながら予算を守ることが可能です。仕様をシンプルにし、無駄な装飾やオプションを削減することで、コスト削減効果が期待できます。
ただし、重要な部分の費用を削ってしまうと、家の安全性や住み心地に影響が出ることもあります。そのため、家づくりにおいてどこを削るか、どこは削らないかをよく考えることが重要です。工務店とよく相談し、納得のいくコスト計画を立てることで、理想の注文住宅を実現しやすくなります。注文住宅で予算オーバーを避けるための具体的な方法をぜひ参考にしてください。